労災医療はもとより、熊本県南地域における中核病院のひとつとして救急医療をはじめとする地域の高度専門医療を担う熊本労災病院様。
国が指定する地域がん診療連携拠点病院であるほか24もの診療科をもつことから、乳幼児~100歳を超える方まで幅広い年齢・疾患の患者さんを受け入れ、良質で信頼される医療の提供に尽力されている。
本号では、そんな熊本労災病院 栄養管理部様が取り組んでいる栄養・食事管理について取材を行った。
PROFILE
独立行政法人労働者健康安全機構 熊本労災病院 栄養管理部
栄養管理部 室長 管理栄養士 藤井 しのぶ 様/主任 管理栄養士 永野 智子 様
当院は救急医療をはじめ高度専門医療を提供する医療機関です。急性期のため平均入院日数13日程度で、疾患はがんや呼吸器疾患、内分泌疾患など様々です。近年は高齢の患者さんが多い印象ですが、幅広い年齢層の方が入院しています。栄養管理部が担う栄養管理および食事の提供では、患者さん一人ひとりの栄養状態、食事摂取状況を把握し、病態に応じた栄養管理を実施することで治療を支え、早期回復や改善につなげるよう努めています。中でも「ハート食」は、化学・放射線療法中の患者さんや食欲低下がみられる患者さん向けに提供している、当院ならではのお食事です。管理栄養士が個別に患者さんのもとへ出向き、食べたいものはなにか、好き嫌いはあるか、どんな調理方法が良いかなど細かく聞き取りを行い、その患者さんのために特別な食事を調理・提供しています。提供後は必ずモニタリングを行い、他職種はもちろん調理師にも喫食状況の共有を行っています。患者さんが少しでも食べてくれたら、喜んでくれたらという想いで日々食事の提供に注力しています。
栄養食事指導は入院時・外来を合わせて月に600件以上実施しています。2022年の実績ではその内の1/3、2023年は約半数が低栄養・がん・摂食嚥下に関する指導です。各病棟担当の管理栄養士は、喫食率が5割以下の患者さんに対してご本人への聞き取りや他職種へのヒアリングを行っています。患者さんの栄養・喫食状況を把握することで、指導の実施や食事内容の見直しを行うためです。例えば、ハート食の導入や食事量・形態の見直し、日清オイリオグループの「ミニタス」などの栄養補助食品を提供するなど、その患者さんに合わせた対応で改善に努めます。また、「食事のことは管理栄養士に」という環境があり、他職種から“この患者さんを見てほしい”と依頼が届くこともあります。当院の医療チームは、いずれもチーム内雰囲気は良く、各職種が意見を出し合いながら、お互いを理解し合うことでスムーズなコミュニケーションがとれていると感じています。私たち栄養管理部は、今後も食事に関することに責任をもち、患者さんに良い状態で転院いただけるよう尽力していきたいと考えています。
当院では栄養補助食品のひとつとして日清オイリオグループの「ミニタス」シリーズを使用しています。いつも利用しているヘルスケア食品を取り扱う卸店さんから紹介いただいたことをきっかけに、2022年10月より使用を開始しました。
「ミニタス」シリーズ導入前は、1個あたり74gで100kcalのエネルギーが摂れるほか、たんぱく質、鉄、亜鉛なども配合されている1個に多くの栄養素が詰まった栄養補助食品を使用していました。しかし食欲のない方はこの栄養補助食品の量でさえ完食することは難しく、“残食が多いこと” が大きな課題となっていました。
当院が考える「ミニタス」シリーズ最大の利点は“とにかく少量であること” だと思います。以前提供していた栄養補助食品と比較するとその差は歴然で、食べきれる患者さんがほとんどです。残すことなく栄養を摂っていただけるため、積極的に提供しています。また、UDF区分「舌でつぶせる」を取得しているため、歯がない方や咀嚼が困難な患者さんにも安心して提供できます。食事介助を行う看護師からは、口に運びやすい点や、口当たりがよい点、とろみをつける手間がない点等を評価する声もよく聞かれます。患者さんにとっても介助を行う看護師にとっても、そして栄養管理を行う管理栄養士にとっても魅力的な商品だと思います。
もうひとつの魅力は「ミニタス」シリーズを提供するだけで足りない栄養素を補えることだと思います。「ミニタス」シリーズは「エネルギーゼリー」「たんぱく質ゼリー」「食物繊維ゼリー」の3種の展開です。当院では3種類全てを導入しており、その患者さんの疾患や栄養状態に合わせた種類を選択して提供しています。時には「エネルギーゼリー」を1日に2度提供したり、昼に「エネルギーゼリー」夜に「たんぱく質ゼリー」というように2種類を組み合わせて提供することもあります。プラスアルファで提供する栄養補助食品は患者さんにとって負担になりやすいため1日に1個提供するという病院・施設さんも多いかと思います。しかし、「ミニタス」シリーズなら1個でたったの25~27gと少量です。複数の種類を何度かに分けて提供することで患者さんへの負担も最小限に抑えられるため、効率よく栄養を摂っていただけていると考えています。また、種類によって味が異なり、飽きにくいという点もメリットでほとんどの方が完食できています。
熊本労災病院様での「ミニタス」シリーズの提供について様々な疑問にお答えいただきました。
他職種に商品の良さを理解してもらうことで治療に必要な費用として捻出しています。
近年の食材費高騰の影響によって、当院の食事も1食あたりの単価が上がっています。また、コストのかかる栄養補助食品の導入となるとさらにコストがかさみ、悩まれている病院・施設さんも多いと思います。当院には「患者さんのためになるものはどんどん使おう」という病院の方針があります。医師をはじめとする他職種にも商品が栄養・食事管理に役立つものだという理解をいただくことで、コスト面をクリアすることができています。実際に食事介助に携わる看護師からは「喫食状況が良い」「介助時間が少なくて助かる」「他の栄養補助食品は吐き出されたことがあるが、そういったことは一度もない」などの良い評判もあがっています。
冷やしたり常温で提供したり、時には患者さんの了承を得た上で、凍らせて提供することもあります。
患者さんへ直接聞き取りを行い、どのような状態だったら食べやすいかを伺い、その患者さんに合った状態で提供するよう対応しています。給食運営形態が直営だからこそできる細やかな対応だと思います。
1人の患者さんに1日に2回お出しすることや、1日に2種類以上お出しする場合などがあります。
患者さんの栄養状態や喫食状態、病状などに応じて複数種類をお出しすることもあります。例えば、朝食はエネルギーゼリー、昼食はたんぱく質ゼリー、夕食は食物繊維ゼリーをお出ししたり、昼食にエネルギーゼリーを2個お出ししたり、食事量が少なければ分食(おやつ)としてお出ししたりとその患者さんに合わせた個別対応を行っています。
〒866-8533 熊本県八代市竹原町1670
熊本県第二の都市であり「い草」の産地としても有名な八代市。工業都市であることから、同院は労災医療を中心とする政策医療を担うための病院として設置された。現在では、地域がん診療連携拠点病院(国指定)、地域災害拠点病院(熊本DMAT指定病院)、救急告示病院、臨床研修指定病院、脳卒中急性期拠点医療機関、心血管疾患急性期拠点病院などの指定医療機関としての役割も担っており、熊本県南地域における中核病院のひとつとして救急医療をはじめとする地域の高度専門医療を支えている。
※本記事は熊本労災病院様に取材させていただいた内容を基に制作しています。
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